冬山遭難事故防止の心得

 

 ヘリコプター
青森県防災ヘリ「しらかみ」

 

冬山での遭難事故が発生しています

毎年、八甲田山、岩木山などで、登山、スキー、スノーボーダー等による遭難事故が発生しています。吹雪のため視界が悪く、スキーコースから外れて沢に入り込んで遭難するケースがほとんどです。山での遭難は、残る家族の悲しみはもちろんのこと、地域の方々に迷惑をかけることになります。冬山遭難事故防止の心得を遵守し、遭難には十分注意してください。

 

1 冬山遭難事故防止の心得

(1)入山前

悪天候の日は、晴れた日とは全く違う姿を見せる恐ろしい山となります。入山は絶対に止めましょう。
家族に行き先、帰宅時間を知らせて出かけましょう。
防寒装備は十分にして出かけましょう。
携帯電話やペットボトル、チョコレート、あめ玉、梅干しなど2〜3日分の食料を持ちましょう。
自分の体力や体調にあわせて、無理をしないようにしましょう。
できるだけ二人以上で出かけましょう。
コンロ(ガス燃料は不適)など、厳寒でも使用できる物を多めに携行しましょう。
ガスライターではなく、オイルライター、マッチなど、厳寒でも使用できる物を携行しましょう。
登山者名簿に必ず記入してから出かけましよう。

 

(2)入山時

入山時に再度気象情報をよく確かめ、天候の急変が予想される場合は入山を控えるなど十分注意しましょう。
入山場所の地形を確かめ、大木等の目標物を定めましょう。
沢には入り込まないようにしましょう。
滑走中に視界が悪くなったら動き回らずに天候の回復を待ちましょう。
スキー、スノーボードを滑る場合は、設定コースからはずれ、冒険してみようなどと冬山を甘く見ないようにしましょう。
無理だと思ったら、引き返すことを決断しましょう。
携帯電話等は体で温めて消耗を防ぎ、必要なときに使用できるようにしておきましょう。

 

(3)万が一迷ったら

テントや木の根本などに雪洞を作ってその中で寒さをしのぎ、携行したコンロ等で暖をとり、救助隊の助けを待ちましょう。
捜索のヘリコプターの音が聞こえたら、高台まで行きタオルなどを振って合図をしましょう。
携行した携帯電話で救助を求めるとともに、現在地の地形など知る限りの情報を連絡しましょう。

冬山よりも大切な命、遭難には十分気をつけましょう。

雪崩の原因となる雪庇の箇所や大きさは、その年の天候や地形によって異なっています。

また、南八甲田山、猿倉岳周辺では、突風によるものと思われる複数の倒木のある箇所が発見されています。このように、その時々や場所によって山々は様相を異にしますので、入山の際には、くれぐれも天候や地形などをよく調べてから楽しむようにしてください。

 

2 冬山遭難者の生還事例

(1)遭難事例1

  ア 概 要

この事例は、八甲田山冬山登山に出かけた遭難者2名が、8日間もの間、真冬の八甲田山で猛吹雪と厳寒に耐え無事生還を果たし命が救われた事例です。

平成13年2月15日午後5時頃、遭難者の家族から「母が勤務する会社から電話があり、青森県の八甲田山に行くといって休暇を取ったが、休暇を過ぎても出勤していないので、遭難しているのではないか。」との通報が青森警察署に寄せられた。警察署では、遭難の可能性があるとして八甲田山付近の旅館等を調査したが、遭難者の足取りがつかめずにいた。このような中、酸ヶ湯温泉から「駐車場に数日前から放置されている車両がある」との情報が寄せられ、2名が同温泉に宿泊し登山に出かけたことが判明した。

県防災消防課では、直ちに陸上自衛隊第9師団に自衛隊派遣の要請を行うとともに、陸上自衛隊・警察・消防など約250名体制で捜索を開始した。しかし、山は猛吹雪で荒れ狂い、数メートル先が見えない中での必死の捜索となったが1日目は発見することができなかった。

捜索の2日目。再び猛吹雪の中で捜索隊は必死で八甲田山を探し回ったが、なかなか発見できないでいた。その日も発見できないまま捜索を打ち切ろうとしていた午後4時35分、遭難者から救助を求める携帯電話が鳴った。遭難してから8日目のことである。しかし、もう1名の遭難者が山の中腹に設営したテントの中で救助を待っており、一刻も早く救助しなければならなかったが、二次災害の危険もあるため夜間捜索を中止し、翌日の捜索に備えてテント設営場所の特定を急いだ。翌日、テントの設営場所を特定した捜索隊は、一気に遭難地点に向かい、見事18日無事救助、保護した。

 

  イ 無事生還した要因

ア 2〜3日分の食料を小分けにして食べていたこと。

イ 冬用のテント、コンロ、装備品等を準備していたこと。

ウ 携帯電話の電源を必要以外はOFFとし、バッティリーが消耗しないように体で保温していたこと。

エ テントは、木立に囲まれた場所に設営したほか、風に飛ばされないよう両端をスキーで固定していたこと。

オ 万が一に遭難した場合に備え、捜索隊が発見しやすい、風上の高台を選んでテントを設営していたこと。

カ 冬山に精通した者を同行していたこと。 

いくら充実した装備品や食料を準備していたとしても、絶対安全ということはありません。登山者名簿に登山ルート等を記入してから登山していたならば、発見が早まったのではないかと考えます。登山届、家族への行き先等の連絡は絶対に守ってください。奇跡はそう簡単には起こらないのだから。

 

 

(2)遭難事例2

  ア 概 要

この事例は、八甲田スキー場のコースで沢に迷い込んだスキーヤー4名が携帯電話で遭難を早く知らせたことから、無事生還を果たし、命が救われた事例です。

平成13年2月19日午後4時35分頃、八甲田スキー場フォレストコースで寒水沢に迷い込んだ岩手県の男性スキーヤー4名が、携帯電話で遭難を知らせたことから捜索が始まった。

通報を受けた県消防防災課は、直ちに陸上自衛隊第9師団に自衛隊派遣要請を行うとともに、翌日の2月20日、警察・陸上自衛隊・消防団など約200名体制で、地上隊と自衛隊ヘリにより捜索を行ったところ、午前7時18分、通報した遭難場所と違う場所で自衛隊ヘリが遭難者を発見、保護した。

 

  イ 無事生還した要因

ア 携帯電話を所持していたこと。

イ 動き回らず、雪洞を掘ってビバークしたこと。

ウ 八甲田山を知っていた者が同行していたこと。

一旦荒れ狂った山の景色は、似たような地形が次々と出てくるため、自分の位置がわからなくなりやすく、冬山の猛威は豊富な経験による判断力を鈍らせることになります。悪天候の日の山は、晴れた日の山と全く違う姿を見せる恐ろしい山であることを肝に銘じておきましょう。いくら八甲田山を知り尽くしたベテランが一緒であっても、また、十分な装備品や食料を持参していたとしても、油断は禁物です。基本は絶対に守ってください。

 


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